契約による担保権(1)…約定担保権を設定するメリット

前回紹介した留置権や先取特権は、確かに、法律上当然に認められる担保権として、相手にお金を支払わせるのに一定の効果があります。

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例えば、留置権は、相手がお金を払ってくれなければ、物を返さないという仕返しをする権利ともいえるので、物を取り戻したい相手は、しぶしぶであってもお金を払うことになるでしょう。

けれども、留置権に基づく限りにおいては、それ以上の強力な手段に訴えることはできません。

例えば、クリーニング屋さんが、お客から預かってクリーニングを施した服を、お客がお金を払ってくれるまで留置することはできますが、それを越えて、服を売りとばして、クリーニング代金を回収することはできないのです。

icon-arrow-circle-o-right また、先取特権も、通常、お金を払ってもらう権利を守る手段を持たない、弱い立場の人たちを守ろうとする権利なので、想定されている金額はそれほど大きなものではありません。

しかし、社会生活を送る中では、何百万、何千万といった大きな金額のお金を貸し借りする場面も少なくなく、このような場合には、お金を回収できなければ、お金を貸した側が破産したり倒産したりする危険があります。

icon-hand-o-up そこで、法律は、契約によって、貸したお金を確実に、かつ他の人に優先して回収する手続を定めることにしました。

このような手続によって設定される担保権を「約定担保権(やくじょうたんぽけん)」といい、法律上は、「質権(しちけん)」「抵当権(ていとうけん)」の二種類を定めています。

約定担保権を設定すると、基本的には、担保権が設定された事実が、ほかの人にもわかるような仕組みが用いられています。そして、担保権を設定した順番が早い人が、担保される貸付金額を、ほかの人に優先して回収することができるのです。

担保権を設定していないと、貸し付けたお金の返済は後回しにされ、お金を借り入れた人の財産の規模によっては、貸したお金が返ってこないこともあり得るのです。

icon-arrow-right 例えば、Aさんが、Bさんから無担保で100万円借りた後、C銀行から5000万円を借り入れて、Aさん名義の時価5000万円の土地に5000万円の抵当権を設定したとします。

そのあと、Aさんが破産して、抵当権が設定された土地以外の財産が0円になってしまった場合を考えてみましょう。

Bさんは、C銀行よりも先にAさんにお金を貸したからと言って、先に返してもらえるわけではないのです。法律上は、抵当権という約定担保権を持ったC銀行が、他の人に優先して、Aさんからお金を返してもらうことができるのです。

icon-hand-o-up このように、約定担保権を設定するメリットは、貸したお金を優先的に回収する点に、その意味があるのです。


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