法律上、当然に認められる担保権

法律には、何らかの契約をしなくても、当然に認められる担保権が二つあります。 一つは、「留置権(りゅうちけん)」、もう一つは「先取特権(さきどりとっけん)」といいます。

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icon-arrow-circle-o-right 留置権というのは、文字通り、物をとどめおく権利です。例えば、Aさんが、服をクリーニングに出したのに、その代金を支払ってくれないような場合に、クリーニング屋さんが「代金を払ってくれるまでは、服を返さない」という権利のことです。

留置権は、物であれば、動産、不動産を問わず対象とすることができ、しかも、誰に対してでも主張することができる権利です。

例えば、家の新築を担った工務店が、代金の支払までその家を引き渡さないまま、その家が銀行などに差し押さえられた場合であっても、銀行に対して代金の支払を受けるまでは、家の引渡を拒むこともできるのです。

icon-arrow-circle-o-right もう一つの先取特権というのは、契約によって設定した担保権に優先して、お金を回収することできる権利で、法律に定める要件を満たせば、当然に認められる権利です。

先取特権には、不動産の工事や売買の代金について認められる不動産先取特権、家賃や宿泊代金、不動産以外の物の売買代金について認められる動産先取特権、その他の給料や共益費、葬式代金などについて認められる一般の先取特権の三種類があります。

icon-arrow-circle-right このうち、不動産先取特権は、工事費用などをあらかじめ登記しておく必要があることから、現在はほとんど使われておらず、普段の生活の中では、主として、動産先取特権と一般の先取特権とが機能していると言われています。

例えば、法学部に通う大学生のKくんが、L弁護士の経営する、とある法律事務所でアルバイトをしていたとします。

この事務所は、市街地にあるMビルの一室を借りていたのですが、家賃がとても高くて、その支払いにも窮するありさまでした。おまけに、L弁護士はなかなか裁判に勝てないので、だんだんと依頼人がいなくなり、とうとう事務所をたたむことになってしまいました。

前途に失望したL弁護士は自殺してしまい、あとには、未払のMビルの家賃と、未払のKくんのアルバイト料、未払のL弁護士の葬式費用、それに未払の事務所の電気料金が残されました。

この場合、まず、動産の先取特権として、Mビルの家賃が回収の対象となります。具体的には、法律事務所の中にあるエアコンやパソコンなど、売れば金になるものから売却して、家賃に充当することができます。

icon-arrow-circle-right 次に、一般の先取特権として、Mくんのアルバイト料、L弁護士の葬式費用、最後に、電気料金の順に支払いがなされることになるのです。

このように、先取特権とは、担保権を設定することが通常は行われていない債権であって、かつ、その債権の実現が、債権者にとって、とても重要(例えば、Mくんにとっては、事務所の閉鎖よりも、未払のアルバイト料の支給の方が余程関心事であるはず)であるものについて、法律が特に何もしなくても担保権を付与したものと考えることができるのです。


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