代理の意味と効果~社会生活を円滑にするための法技術

前回、妻であるBさんの特有財産であるマンションを、夫であるAさんが処分した場合を例に挙げました。
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icon-hand-o-up このように、夫が妻の特有財産を勝手に処分したとしても、それによって得られたお金を日常の家事に関する債務に充てる場合には、その処分が有効とされる場合がある点についても触れました。

それでは、なぜ、このようなことが許されるのでしょうか。それは、法律上、「代理」という制度が認められていることが理由の一つです。

「代理」というのは、ある人(これを、代理の法律構成では、「本人(ほんにん)」と呼んでいます)の依頼を受けて、代わりの人が本人のために何かの契約をする場合をいいます。そして、契約の効果は、代理人ではなく、本人に生じることになるのです。

icon-arrow-circle-right 代理という制度は、広く社会生活一般で用いられています。例えば、親が、自分の子供のために、小学校に入学させる手続をする場合、それはその子供と小学校との間の契約を、「法定代理人(ほうていだいりにん)」としての親が代わりに行っているのです。

また、会社員が、会社のために取引をする場合、その会社員は会社の代理人として取引をしているため、その取引の効果は会社について生じるものであって、その会社員について生じるわけではありません。

このように、代理は、本人にもたらす法律上の効果を、他人が代わりに行うことで、円滑な社会生活を実現する機能を持つ制度なのです。

icon-arrow-circle-right ところが、代理人とされる人が、本当に代理人なのかどうかはっきりとしない場合があります。そもそも、「自分は、Aさんの代理人だ」と言ったところで、本当にその人が代理人かどうかは、本人であるAさんに確かめなければ知りようがありません。

そこで、法律は、代理人と自称する人が、代理人として何かの取引をする場合には、原則として、本人から代理権を与えられた事実と、代理人が本人のためにそのような取引をしたのだという事実を明らかにすることを求めています。

icon-arrow-circle-right 前回の例にあてはめると、C銀行としては、Aさんとの取引の経緯や従来の取引の実態などを踏まえて、夫であるAさんが妻であるBさんの財産を処分する場合には、それが日常家事債務のためという理由があれば、AさんがBさんの代理人であることを自称し、日常家事債務に関する代理権をBさんから与えられます。

かつ、日常家事債務に充てるためのマンションへの抵当権の設定という取引行為を行っているものと信じたならば、妻であるBさんの代理人として取引をしているとの推定を働かせることができることになるのです。


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