お金をめぐる事件(その5)-特殊な詐欺事件

お金の借り入れについての法律知識を簡単にまとめたコラムも、最終回となりました。今回は、クレジットカードを悪用した特殊な詐欺事件について紹介したいと思います。
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Aさんは、宗教家のBさんに勧誘されて、Bさんの主宰する教団の儀式に参加していましたが、参加費用が高額で、その費用をなかなか捻出できないでいました。

そこで、Bさんは、Aさんに、信販会社でクレジット契約をさせ、クレジットカードを持たせて、教団から教本や儀式用の祭具を購入したように見せかけて、信販会社から立て替え払いを受けることにしたのです。

icon-exclamation-triangle けれども、遂に、Aさんは、実際には購入していない祭具の購入費用を支払うことができなくなってしまいました。この場合、Bさんにだまされたのは、誰なのでしょうか。

icon-arrow-circle-right 一般的には、クレジットカードを使用した詐欺の場合には、クレジットカードで商品やサービスを提供した店舗に対する詐欺罪が成立するとされています。

けれども、今回のケースでは、商品を販売した(ことにしている)のは、Bさんです。そして、儀式の費用の支払に充てるため、買ってもいない祭具を買ったことにして、代金を信販会社が建替えてくれることを、AさんもBさんも知っています。

icon-arrow-right 裁判所は、このケースで、Bさんについて、Aさんに対する詐欺罪と、信販会社に対する詐欺罪の成立を認めました(最決平成15年12月9日刑集57巻11号1088頁)。

このケースの特殊性は、詐欺による被害が一つしかないのに、二つの詐欺罪が成立している点にあります。

つまり、実際には購入していない祭具の費用を立て替え払いしたのは信販会社ですから、信販会社がAさんから代金を回収できなければ、損をするのは信販会社です。

icon-arrow-circle-right これに対して、Aさんが、もし、信販会社に代金を支払うことができたのならば、信販会社は困りませんが、逆に、Aさんが損をすることになります。

裁判所の論理は、この二つの損害が同時に発生する可能性に着目してそれぞれに詐欺罪の成立を認めたものと言えるでしょう。

クレジットカードは、手元に現金がなくても買い物ができてしまう便利なツールですが、その分、犯罪のためにも悪用されることの多いものです。クレジットカードを利用する際は、現金を支払うつもりで利用するという心がけが大切なのかも知れません。

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