お金をめぐる事件(その1)-だまし取ったお金で返済

会社の資金繰りに困っていたBさんは、C銀行からの1000万円の融資の返済ができませんでした。
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そこで、Bさんは、資産家のAさんに近づいて、「うまい儲け話がある」と嘘をつき、Aさんから1000万円を出資させて、このお金をC銀行に返済しました。さて、だまされたことに気付いたAさんは、どうすればよいのでしょうか。

本来であれば、Aさんからお金をだまし取ったのはBさんですから、Bさんにお金の返済を求めるのが筋というものです。

icon-exclamation-circle しかし、資金繰りに困っているBさんに返済を請求しても無い袖が振れるはずもなく、Aさんが裁判で勝ったとしても回収の見込みは立ちません。

そこで、Aさんは、C銀行に目を付けました。というのも、Bさんがお金を返せないのであれば、そのリスクを負うのはBさんに融資をしたC銀行であって、Aさんではないはずだからです。

icon-hand-o-up Aさんは、C銀行に、Bさんから払ってもらった1000万円を自分に返してほしいと求めて裁判所に訴え出ました。

icon-arrow-circle-right 実は、このような訴訟は戦前からしばしば見られたものです。法律上は、「騙取金(へんしゅきん)による弁済(べんさい)」と呼ばれる問題ですが、戦前の裁判では、Aさんの訴えが認められることはありませんでした。

それは、BさんがAさんからだまし取ったお金と、もともとBさんが持っていたお金とは、Bさんのもとで合算されてしまうし、BさんはAさん以外の人からもお金を調達している可能性があるのだから、C銀行に払われたお金は、Aさんがだまし取られたお金であるとは限らないという理由からでした。

ところが、戦後、同じような訴訟で、裁判所の判断は、C銀行がBさんから返してもらったお金がだまし取られたものであることを知っていれば、Aさんの請求は認められるべきであるというように変化します(モデルとなった判例:最二判昭和42年3月31日民集21巻2号475頁)。

icon-arrow-circle-right この例のモデルとなった裁判では、結論としてAさんの請求を認めない結論となりました。

しかし、Bさんが慢性的に資金繰りに苦しんでいるのに、返済の期日に、いきなり1000万円ものお金をC銀行に返したのであれば、C銀行は、そのお金が誰かから騙し取られたものではないのかと疑うべきであり、お金の出所を確かめる義務を負ったものと理解することもできるのではないかと思われます。

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