お金を返してもらう(その9)-気を付けておきたいこと

1 時効の中断

お金を返してもらうために裁判をしたり、支払督促の手続をしたりすると、お金を返してもらう権利(債権)の消滅時効の進行が止まります。法律上は、これを「時効の中断」と呼んでいます。
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icon-hand-o-up 似たような概念に、「時効の停止」というものがあり、これは、時効の進行が一時停止することを意味するので、停止事由がなくなると、再び、停止していた時効の進行が再開されます。

これに対して、「時効の中断」というのは、進行していた時効が一旦元に戻って、最初から進行を始めることです。

法律上、時効の中断をもたらすのは、訴訟や支払督促の手続によってお金の支払を請求する場合が挙げられていますが、特に、代理人(訴訟代理人、「お金を返してもらう(その4)-代理人の選任」参照)を立てることなく当事者本人がこうした手続をする場合には、気を付けておきたいことがあります。

それは、たとえ、訴訟や支払督促の手続きを申し立てたとしても、これらを取り下げたりすれば、時効の中断の効果が生じなかったことになるという点です。

例えば、お金持ちのAさんが、日頃からお世話になっていて近所に住む知人のBさんに10万円を貸し渡したのに、期限になってもBさんが返済してくれなかったとします。

Aさんは、「Bさんは親切だし、ご近所だし、100万円くらいのことにあまり催促するのも悪いなあ…」と思いつつ数年が経ちました。

icon-arrow-circle-right ところが、返済期日から9年11か月ほど経った頃、AさんとBさんは大喧嘩をしました。頭に来たAさんは、10万円の貸金の返済を求めて訴訟を起こしました。

ところが、Aさんが訴え出てから2か月後(返済日から10年と1か月後)に法廷に出頭したBさんは、いかにもしおらしく、涙ながらに生活苦を切々と訴え、この裁判のために、一家離散の危機に瀕していると述べたのです。

気の毒になったAさんは、「お金を返してくれるのはいつでもいいから、とりあえずこの訴訟を取り下げることにします」と裁判所に伝え、Bさんも「そうしてもらえるとありがたい。Aさんには心から感謝します」と述べて、この裁判は終結しました。

2 裁判上の催告による時効中断効の復活

さて、先ほど、裁判を起こせば時効は中断すると説明しました。但し、これは、判決が確定した場合の話です。

この例のように、訴えを取り下げると、裁判はなかったことになるので時効は中断せず、Aさんが訴えを取り下げた時点では、Bさんの借入金の返済義務は、時効により消滅してしまうのです。では、Aさんは、どうすればよかったのでしょうか。

icon-hand-o-up ひとつには、裁判で、判決を得なくても、和解によって、返済条件を裁判所で調書にしてもらうという方法が考えられます。これによって、BさんのAさんに対する返済義務は、和解の日から10年間存続することになります。

また、訴えが取り下げられたとしても、取下げの日から6か月間は、消滅時効が完成しないとされています。

そこで、Aさんは、Bさんに、「とりあえず貸金の一部でもよいから、5か月のうちに支払ってほしい」と求めて、その支払いがない場合には、改めて訴訟や支払督促の手続きなどを講じることで、貸金の返済を求める権利が保たれることになるのです。

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