お金を返す(その7)-相殺の基礎知識

1 相殺(そうさい)とは何か

相殺というのは、お金を貸している人と借りている人との間に別の貸し借りがあって、しかもその貸し手と借り手があべこべになっている場合に用いることができる方法です。

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例えば、AさんがBさんから15万円を借りているときに、実はBさんも別の機会にAさんから10万円を借りていた場合を考えるわかりやすいかも知れません。

この場合、両方の借入の返済期日がともに過ぎていたときは、一方が、相手に、「借入を相殺するよ」というだけで、同じ額だけ借入がなくなります。口頭で告げただけであっても相殺できるのです。

上の例でいえば、AさんとBさんのどちらかが相殺すると告げただけで、10万円を限度として借入が無くなり、AさんのBさんに対する5万円だけが借入として残ることになります。

icon-hand-o-up 相殺という制度は、現実にお金のやり取りをしなくても、お互いが同じ金額だけ支払ったことにするという実利的な意義もあるのですが、もう一つ、貸したお金の担保としての機能も期待されていると言われています。

例えば、銀行が、預金者の預金の一部を定期預金として預かっている場合、その定期預金の限度で、預金者にお金を貸し付けることがあります。この場合、銀行は、預金者から借り入れたお金の一部を、その預金者に貸し付けていることになるのです。

預金者が、返済期限までにその借入金を返済しない場合には、銀行は預金者から借り入れた定期預金を解約して、貸付金と相殺することで債権の回収を図ることができるのです。

また、法律では、借り入れが消滅時効によって消滅した後であっても、消滅前に双方の借り入れがともに返済の期日を迎えていたときは、相殺することができると定めています。これも、相殺の担保としての意義を具体的に法定したものと言えるでしょう。

相殺は、お金を貸し借りしている当事者の間だけでなく、例えば、保証人は、お金を借りている人がお金を貸している人に対して持っている債権を、相殺に供することができます。

icon-hand-o-up これは、保証人が、元本だけでなく利息や遅延損害金全額についても、お金を借り入れている本人と同等の責任を負う立場にあることから、例外的に認められていることなのです。

2 相殺ができない場合

但し、どんな借入金であっても相殺ができるわけではありません。法律では、①相手方に損害を与えたために支払わなければならない損害賠償②差押が禁止された借入金を相殺の対象とすることができないとされているほか、③実際に差し押さえられた借り入れも、相殺の対象とすることができないとされています。

例えば、相手に怪我をさせた場合の治療代や、離婚した相手の子の養育費など、お互いに貸し借りがある場合であっても、実際にお金をやり取りする必要がある場合には、相殺を認めるべきではないという考慮に基づいているものなのです。

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