お金を借りる(その3)-約定利率と損害賠償

1 遅延損害金という名の損害賠償

Aさんが、Bさんから年利10%で1000万円を借りて、1年後に返す約束をしたとします。この場合、Aさんは、1年後にBさんに1100万円を返さなければなりません。

画像1-3
けれども、Aさんは、約束の返済日に1100万円をBさんに返しませんでした。この場合、Bさんは、Aさんに「貸したお金を返してくれ」と要求できるのは当然として、法律上、他に、何か言うことができるのでしょうか。

通常、お金を返す日を定めたのに、お金を借り入れた人がそのお金を返さなかったときは、お金を貸した人は、その日の翌日から借入金を完済するまでの間、「遅延損害金」という名目の損害賠償を求めることができるとされています。

icon-hand-o-up この場合、どのくらいの額を賠償請求できるのかについて、最高裁判所は次のように判決しました(最判昭和43年7月17日民集22巻7号1505頁)。

icon-arrow-circle-right まず、原則として、損害賠償の額は、お金を貸し借りした当事者が損害賠償について取り決めをしていたときは、それに従うものとします。もし、そのような合意がされていないときは、元本(実際に借りたお金)に対して、法定利率で計算した金額を損害賠償の額とします。

法定利率というのは、法律が定める利率のことで、民事であれば年利5%、商事であれば年利6%です。(なお、民法改正原案では、法定利率を原則3%として、3年ごとに1%刻みで見直すことが盛り込まれました。)

けれども、利息について取り決めた利率(約定利率:やくじょうりりつ)が年利5%よりも高く設定されているときは、約定利率で計算するべきです。

なぜなら、損害賠償を法定利率で計算するものとすれば、お金を返さない人にとっては、返さない方が利息が安上がりで済むのと同じことになって、貸した人と比べて不公平だからです。

2 例えば・・・

今回の例で考えてみましょう。Aさんは、Bさんから借りたお金を返すべき日に返しませんでした。仮に、当初の約定利息が年利3%だったとすると、Aさんの借入金は1000万円、利息は30万円ということになりますね。

icon-arrow-circle-right そして、約束の日の翌日から、今度は、Aさんは、1000万円に対する法定利率(民事であれば年利5%、商事であれば年利6%)での遅延損害金を支払うことになるのです。

Aさんが約束の日から更に1年間借金を返さないと、借入金元本1000万円と、当初の利息30万円に加えて遅延損害金として50万円(民事の場合。商事であれば60万円)、合計で1080万円(商事であれば1090万円)をBさんに支払わなければならないことになります。

icon-arrow-circle-right これに対して、先ほどの例のとおり、約定利率が年利10%であれば、この利率は法定利率を上回っているため、約定利率である年利10%で遅延損害金を計算することになります。

従って、Aさんが約束の日から更に1年間借金を返さないと、借入金元本1000万円と、当初の利息100万円に加えて遅延損害金として100万円、、合計で1200万円をBさんに支払わなければならないことになります。

この場合、結果的にはAさんは、Bさんから、当初と同一の条件で1000万円を借り続けたことになります。それならば、Aさんは別に慌てて無理にお金を返さなくても、返せるだけの余裕ができるまで借り続けておいた方が得だよね・・・と思うかも知れません。

icon-exclamation-circle しかし、そういうわけにはいきません。これについては、次回「お金を借りる(その4)-単利の原則と法定複利」で取り上げます。


このページの先頭へ