その8 時効を主張できるのはどのような場合か

1 時効の意味

法律上、「時効」という言葉には様々な意味がありますが、借入金を返す義務について「時効」というときは、「消滅時効」のことを意味しています。

icon-hand-o-up よく、「飲み屋のツケは、1年間放っておくとチャラになる」などといいますね。この、「チャラになる」というのが、法律上、「消滅時効」といわれるものです。

時効の制度には、「権利の上に安住することなく、行使すべき権利は、速やかに行使しなさい」ということと、「一旦、取引によって形作られた事実状態を保護しましょう」ということの二つの意味があると言われています。

icon-arrow-circle-o-right 前者は、権利の行使を促すことによって、法律関係を適切に確定させていくことを目的とする政策的な趣旨ですが、後者は、むしろ当事者以外の関係者が安心して取引をすることができるようにするためのものだと言われています。

例えば、江戸時代に10両を貸した人の子孫が、借りた人の子孫に「借金を返せ」と請求したとしても、その証拠が信用できるか、貨幣価値をどう計算するかなど、いろいろと困った問題が起きてしまいますよね。

このように、消滅時効というのは、一定の時間が経過すれば、権利をなかったものとして、新たに取引関係を築いていきましょうという制度なのです。

2 時効完成までの期間

それでは、時効は、どのくらいの期間が経つと完成するのでしょうか。これは、権利の種類によって決められています。

icon-hand-o-up まず、原則として、10年間が時効完成までの期間です。普通のお金の貸し借りなどは、10年間放っておくと、時効によって請求権が消滅します。借入金の請求権は、これにあたります。その他の権利について、主なものを掲げておきます。

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3 時効の進行と用い方

借入金債務の消滅時効は、借入金の返済の日の翌日から進行を始めます。例えば、AさんがBさんから10万円を借りて、2004年3月31日に返す約束をしていたとすると、この日の翌日である2004年4月1日に進行を始め、10年後の2014年3月31日24時に完成します。

Bさんとしては、時効完成までに、Aさんに貸しつけた10万円を返してくれるよう求めることで、時効の進行を止めてしまうことができます。ただ、この請求は、裁判所に申し立てなければならず、Bさんには、少々負担が重いかも知れませんね。

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一般には、内容証明郵便など証拠の残る形で支払いを求める方法がよく用いられています。この書面には、請求額とともに、「もし支払わないなら、裁判に訴えるぞ」との脅し文句が添えられており、多くの場合、この書面の要求通りに支払いがなされます。

icon-hand-o-up では、Bさんから、2014年4月10日にこのような支払いを求める書面を受け取ったAさんはどうすればよいでしょうか。Aさんが借りた10万円の債権は、すでに2014年3月31日を過ぎた時点で完成しています。

そこで、Aさんは、「時効だよ」と言えば、Aさんは支払わなくても済むことになります。これを「時効の援用」といいます。

もっとも、法律は、消滅時効が完成した後は、お金を返してはならないとまで言っているわけではなく、時効を理由に借金を踏み倒すのか、支払うのかは、借入をしたAさんの自由です。

その意味では、時効期間が過ぎたからと言って借入金の債務が確定的に消滅したとまでは言えないのです。円満な人間関係を維持するためには、借入金を返した方がいいのは言うまでもありませんが…。

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